2月15日(金)から17日(日)までの3日間、和歌山県白浜町で開催された「ひきこもりハッカソン」に参加してきました。

ハッカソンってなに?

ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語です。エンジニア、デザイナー、プランナー、マーケターなどがチームを作り、与えられたテーマに対してそれぞれの技術やアイデアを持ち寄り、短期間に集中してサービスやアイデア、Webアプリケーションの開発などの成果を競うイベントです。

ハッキング (英語: hacking、別名:ハック,hack) とは、コンピュータの隅々までを熟知した者が行うハードウェア・ソフトウェアのエンジニアリングを広範に意味する言葉。他人のコンピューターに不正に侵入するなどの行為がハッキングと呼ばれる場合もあるが、これは正式にはクラッキングと呼ぶ。(Wikipedia)

このイベント本当に最高でした。「この3日間のハッカソン参加で何かが変わるかもしれない…」という言葉の通り、何のスキルも無い僕でも非常に多くの気付き、学び、仲間と巡り合うことができました!僕(河合)にとって、このイベントがどう最高で、なぜ最高だったのかを考えてみます。

なぜ「ひきこもりハッカソン」に参加したのか

不登校・ひきこもりのリアルを知りたい

もともと教育現場にいた僕は、不登校やひきこもりに興味関心がありました。「え、不登校やひきこもりの何がダメなの?」という関心です。「不登校は不幸じゃない」という全国的な運動の広がりにも見られるように、最近では「不登校=不幸」という考え方は薄れてきているように感じます。しかし、世間でも教育業界でもまだまだ「不登校=不幸」と思い込んでいる人はたくさんいます。社会・生き方の多様性に対して学校制度が全然追いついていないなと感じていました。しかし頭では多様性の重要さを分かっていても「じゃぁ不登校になった子のその後をサポートできるの?高校入学は?就職は?彼らがどうやって生きていけばいいか具体的に提示できるの?」という課題が僕にはありました。具体的な支援方法も知らないくせに口だけで綺麗事言うなよと。自分自身に対するこのような問題意識から、まずは実際に当事者に会ってみようと思ったのが参加の一つのきっかけです。

就職支援プロジェクトの参考にしたい

今僕は、地元の中津川で武井理社長と一緒に「彩プロジェクト〜Irodori Project〜」を進めています。(仲間大募集中です!詳しくはHPまで)この彩プロジェクトの教育事業の一つとして第二新卒(学校を卒業後1~3年で、転職または就職を志す25歳前後の方々)の就職支援をする計画があります。

詳しくはまだ言えませんが、第二新卒に特化した人材紹介会社と提携して、転職のための支援を中津川で行う予定です。ブラック企業で潰されてしまった人、新卒で入社して辞めたいと悩んでる人、転職で悩んでいる人が中津川に来て、リフレッシュ&スキルの習得をして次のステージに進むというような内容です。

自己肯定感が低くなってしまった彼らに、どうやって元気になってもらうのかを考えていたときに「この3日間のハッカソン参加で何かが変わるかもしれない…」というフレーズが飛び込んできたのです。

もともとITやプログラミングに興味があったこと、不登校やひきこもりについて知りたかったこと、転職支援のためのプログラムを考えていたことが重なり、今回の参加に至りました。

1日目

施設デザイン

岐阜から6時間という長距離移動を経て、会場であるイノベーション・スプリングスに到着しました。この施設がまた最高なんですよ。シリコンバレーに対する僕の勝手なイメージをそのまま具現化した場所でした(笑)リゾートホテルのような施設、少し歩けばプライベートビーチ、施設周辺はもともと温泉リゾート地なのでとても落ち着いた雰囲気がある。ハッカソン会場にはコーヒー、紅茶、お菓子、ご飯、味噌汁、漬物(笑)が常備してある。クリエイティブになるための環境がものすごく整えられていて、リラックスしながらひたすら開発に集中することができました。一般的な学校や会社のような無機質なオフィスや机と比較しても、圧倒的にこっちの環境のほうが生産性が高くなるだろうなぁと感じました。イベントでの施設デザインという点でまず勉強になりました。

施設内のプール。ここから数分でビーチ!

始まる前の会場

夕食

19時のウェルカムスピーチを皮切りにひきこもりハッカソンがスタートしました。会場には50人ほどの参加者がおり、僕は「誰がひきこもりの人だろう?あの人っぽいな〜」などというなんとも偏見に満ちた思いを巡らせていました。そして開会式後、最初のイベントが夕食でした。「はい、では皆さん夕食をとって下さい〜」と言われ立食式の夕食が始まったのですが、単独参加していた僕にとってはかなりハードルの高い夕食になりました。「しゃべる相手がいねー!」という状況ですね。「この夕食のとりかた、ひきこもりの人には相当ハードル高くないか?」と偏見的に思っていたわけです。僕も適当にきっかけを作って、初対面の人とおしゃべりを始めました。優しいKさん、助かりました(笑)Kさんも僕と同じように技術屋さんではなく、営業をされている方でした。

ひきこもりの人からヒアリング

夕食の後、1階組と2階組にグループが分けられてワークショップが始まりました。後で分かったことですが、1階組が一般参加者、2階組がひきこもりの人でした。1階では五十川 員申(いかがわ かずのぶ)さんの神ファシリテートでワークショップが進んでいきます。このあたりのフレームワークもめちゃくちゃ勉強になりました!色んな方法を使って僕らがおこなったのは「偏見崩し」です。

開発者がひきこもりの人を理解していないのに、ひきこもりの人を支援するプロダクトは作れない。だから今回はざっくばらんに何でも聞いてみよう!そんな趣旨のワークショップです。①ひきこもりに対して自分が持っているイメージをたくさん出す。②メンバーのひきこもりイメージをグルーピングする。③ひきこもりの人に聞いてみたいことをたくさん出す。④質問したい項目に優先順位をつける。

僕のチームでは「生活サイクルってどんな感じ?」という質問から「親がいなくなったらどうやって生活するつもり?」「ひきこもりであることを自分ではどう捉えている?」というようなセンシティブな質問まで、本当に僕らが聞きたい質問が用意されました。

ちなみに、僕のイメージは『3年B組金八先生』の第5シリーズ、健次郎の兄・雄一郎です。

2階のひきこもりチームが合流しヒアリングが始まりました。僕のグループは一般参加4名、ひきこもり経験者2名でした。言葉の選び方に注意しつつヒアリングが始まりましたが、始まって5分後には一般参加者の偏見は崩れ去っていまいた。「ひきこもりとか関係なく、めちゃくちゃアクティブやん!」

「本当に引きこもっている人はそもそもハッカソンに参加しない」「そんなのはごくごく一部のひきこもりの人だけだ」と思われるかもしれません。実際にそうなのかもしれませんが、ひきこもりの人や、ひきこもりを経験した人に対して、僕らが偏見を持っていたということを確認できた瞬間でした。

ひきこもり経験者のある男性は、自己紹介の段階で「私は自閉症スペクトラム障害を持っています。昔、対人関係が苦手で不登校、ひきこもりを経験しましたが、障害の診断が出てからは、ひきこもってYoutubeに動画を投稿していました。」と話してくれました。彼はデザイナーとして参加しており、イラストデザインでは僕(美術の成績2)よりも圧倒的にスキルが高かったことは言うまでもありません。

また、別の男性は大人になってからADHDだと診断され、ブラック企業で潰されてそのまま引きこもるようになったそうです。しかし、ひきこもり期間の後には世界中を旅したし、ビジネスプランコンテストにも参加されたそうです。

そんな話を聞きながら、グループの一般参加者メンバーは全員思った訳です、「僕らとひきこもりの人の間に境界線なんか無い」と。僕よりもはるかに有能な人たちが、ひきこもりというレッテルのせいでチャンスを失っている。これは問題だ!これをハックしなければいけない!と実感したわけです。

22時、1日目終了

ひきこもり経験者への質問だけでなく、一般参加者にも「会社で働くってどんな感じ?」という質問があるなど、グループでのディスカッションは大いに盛り上がりました。そうこうしているうちに22時となり、1日目は終了。この段階でfacebook友達申請が始まりました。まさかの共通の知人がいたりして、奇跡の出逢いでした。

参加費1000円(ひきこもり経験者は500円)で、3日間の食事と宿がすべて提供されるあたりも、このイベントの素晴らしいところです!ただ、ほとんどの参加者は会場であるイノベーション・スプリングスで宿泊できましたが、僕は参加申込が遅く、自分で宿を用意しなければいけませんでした。宿探しも面倒だし、どのみち車で行くので車中泊でいいか〜と思い、人生初の車中泊に踏み切りました。SUVで良かった!そして、車中泊非常に快適でした(笑)

また、同じグループに外泊する人がいたので、その人を送りがてら一緒にラーメン屋へ。先ほど話に出てきた、ADHD持ちのひきこもり経験者の方です。和歌山ラーメンを食べながら、ここでもかなり話が盛り上がりました。ここで文章にすることはできませんが、かなり面白い経験をされている方でした。2人の会話でもやっぱり出てきました、「ひきこもりとそうじゃない人の間に境界線なんか無い」と。

2日目の朝は7時からやっている温泉へ。何と言ってもここは南紀白浜です。温泉に入るのも目当てにしてやってきたのです。そして、温泉入る前から強烈に感じたことは「めちゃくちゃ硫黄くせぇ!」温泉ってこんなに硫黄臭いものでしたっけ?温泉の湯もちょっとピリピリする。(僕は肌が弱い)効能を全身で感じて2日目に突入です。

和歌山ラーメン

朝風呂した温泉

 

2日目

本チーム分け

前日のヒアリング内容を3分間でプレゼンするワークです。前日聞けなかったことをさらに深堀しながら、同時にメンバーがパワーポイントを作成してくれました。グループには学生もいましたが、さっさと発表資料を作ってしまうあたり、スゲ〜!の一言です。

プレゼンが終わるといよいよ開発チーム分けです。①タイムマネジメント、②アンテナ、③コミュニケーションの3系統から自分の好きな系統に移動します。なぜこのような系統になったのかは僕には分かりません。会場でも「難しいことは考えずに、もう直感で動いちゃって下さい!」とのゆる〜いアナウンス。こういうアナウンスもイベントの雰囲気を作り出すのには重要ですね。僕は③のコミュニケーション系統へ。1日目の夕食の時にしゃべったKさんも同じ系統にいました。お、一緒のグループになるかな、ワクワク!と思っていましたが、一緒になりませんでしたね。エンジニアやデザイナーの人数調整をしつつ、最終的には6人グループが結成されました。KさんがいるのがコミュニケーションAチーム、僕はコミュニケーションBチームです。

Zoomを経由した発表は非常にスムーズ

開発チームでのアイスブレイク

本チームでのアイスブレイクとして「1万台の中古洗濯機を売るために、30秒のCMを考えよ」というお題が出されました。昼食をグループメンバーと食べながらお題について話し合います。お互いの素性が分からないので、探り探りディスカッションをするのですが、これがなんとも新鮮で面白かった瞬間ですね。うちのチームは「アイドルの衣装を洗濯した上で、1台20万円くらいで売る」という答えに至りました。

開発スタートまでもう少し

五十川さんの神ファシリテートによって、開発がスタートできるようにコーディネートされます。僕らのグループでは「コミュニケーションをする時、気負いなくやりとりできるように、文章をいい感じに変換したい」という考えに至りました。しかし、敬語に変換してくれるサービスなどは既にあります。僕らのグループが考えたのは「片言(カタコト)への変換」です。

冗長なビジネス文章ってよくありますよね?ホウレンソウ(報告・連絡・相談)するのに「お世話になります」とか無くてもいいですよね?結論だけ簡潔に伝えてよ!ムダなビジネス文章を考えるのにだいぶストレスを感じていませんか?これをすべてカタコトに変換するのです。以下、ウチのリーダー(ハッカー)が素晴らしい説明をしてくれたので拝借します。これはハッカソン最終段階での内容です。開発スタート時にはこんなに内容は詰まっていませんでした。

【コンセプト】
IT人材の不足が叫ばれる中、オフショア開発や外国人労働者の雇用が積極的に行われ始めている。そんな中、日本語特有の冗長なビジネスメールはコミュニケーションの大きな壁となっている。この問題は外国人だけでなく、ひきこもりから復帰したての人や、社会人1年目にとっても同様である。そこで、日本語の冗長表現を強制的に片言に変換してしまうWebサービスによって日本語が得意な人、苦手な人、コミュニケーションが得意な人、苦手な人、そのすべての人が同じ土俵に立つことでコミュニケーションの円滑化を実現する。

【機能】
Web APIとしてサービスを展開。Postメソッドで送信されたテキストを片言にして返す。
1.日本語特有の表現を削除(Katakoto処理)
Microsoft が提供するCognitive Servicesを利用し、送信されたテキストを別言語に翻訳する。翻訳結果を再度日本語に変換することで実現。対象言語はAIによって自動判定されるため、多言語対応を実現。
2.最低限の言葉への変換(Less処理)
「ありがとうございます。⇒ありす。」のように意味が最低限わかる表現に変換する専用辞書を作成。辞書登録もAPIとして公開されているため、一般ユーザの登録により成長していく。

「文章表現をLess(より少なく)することで、逆にコミュニケーションを促す。Less表現が一般化すれば誰でも気負いなくコミュニケーションに参加できる。」というアイデアが出てきた時は正直「勝った!」と思いましたね(笑)

うちのチームは販売まで考えます!

開発スタート

2日目の17時から本格的な開発がスタートしました。イベント全体からみたら後半からなんですね。開発に取り掛かるまでのイベント設計もとても参考になります。ウチのチーム編成は①リーダー(ハッカー)、②M君(ハッカー、デザイナー、ひきこもり経験アリ)、③T君(デザイナー)、④S君(マーケター)、⑤河合(遊び人1)、⑥ねーさん(遊び人2)です。遊び人2なんて言っているとまたねーさんに怒られそうですが、悪意の無い僕なりの尊敬表現です。

いざ開発が始まると僕は驚くほど無力でしたね(笑)まじで何もできない!こんなにガッツリパソコンを使うと思っていなかったので、Chromebookしか持参しておらず、画像や動画編集も満足にできない…僕の必殺技「仕事してるフリ」が常に発動していました。

ただ、真面目なことを申しますと、チームビルディングという点は意識していたので「とにかくチームの雰囲気を良く保とう!」という努力はしていました。ハッカーやデザイナー、マーケターと実際に作業をする経験なんてしたことがなかったので、めちゃくちゃ興味津々で何でも聞いていました。何を聞いてもみんな優しく教えてくれるし、その度にスゲ〜そんな世界があるのか!という驚きばかりでした。雑談も含めて、うちのチームのコミュニケーション量はかなり多かったと思います。

チームでの開発の様子

僕に負けず劣らずで自由奔放だったのがねーさんですね。休憩に行ったきり2時間くらい帰ってこない、隣部屋のコミュニケーションAチームのメンバーみたいになってるなどなど(笑)そんなこんなで、2日目もあっという間に22時になりましたが、うちのチームは作業を止める気配はなし!時計も12時をまわり3日目に突入。僕は休憩と称して(休憩のほうが長い)深夜の食堂でメロンパンを食べるのでした。おいしかった。

ただ、僕もねーさんも仕事がなかったわけではありません。プログラミングはできなくてもマーケティングならば、無い知恵を絞って考えることはできるのです!マーケターのS君が僕らに絶妙に仕事を振ってくれます。「このアプリを使うユーザーを具体的に想像してみましょう!(ペルソナの設定という作業らしい)」「アプリ導入を促すウェブページ(ランディングページ・LP)を作るのでアピール方法を考えましょう」…気遣いの神ですね。

で、どうやってアプリを消費者に認知してもらうかを、ねーさんと考えていたところ「動画とるか!」となりました。この頃になると深夜の変なテンションになっており、なぜ動画を作ることになったのか覚えていません…そして12時過ぎから動画撮影が始まります(笑)そして1時くらいかな?ねーさんのMacで動画編集が始まる。動画編集しているかと思ったら、気がついたらねーさんが消えている(笑)

2時頃には僕ができることは本当に無くなったので、作業しているメンバーを後に僕は先に離脱しました。ごめんなさい!車に戻って爆睡。翌朝また温泉へ!

3日目

開発大詰め

朝会場に着くとメンバーが既に作業をしている!あなた達は何者だ!(笑)ただその場にねーさんはおらず、「どうせ寝坊だろうな〜」と思っていたところメンバーから「動画できてるよ〜」の一言。「まじかっ!?!?」僕が帰った後も、どうやらねーさんは作業をしていたようです。寝坊だろうなぁ〜などと考えていた僕は、切腹ですね。

いよいよ開発は大詰めです。何十時間と開発を続けてきましたが、最後のプレゼンはたったの3分です。プレゼンの練習にも緊張感が漂います。メインプレゼンターのS君も大変なプレッシャーだったと思います。本番のプレゼンは準備どおりにうまく行き、動画も問題なく再生され、ややウケました(笑)

他のどのチームのプロダクトも本当に面白いものばかりでした。プログラミングやデザインのように目に見える部分だけでなく、発表に至るまでのチームの歩みが滲み出ているようでした。

審査結果

最優秀賞は逃しましたが、ハッカソンらしい取り組みということでGeek賞をいただきました。チームごとに〇〇賞があること、プレゼンできなかった部分を説明できる展示タイム、イベントアンケートの次にデジタル寄せ書きが用意されていることなど、最後の最後までデザインしつくされたイベントでした。

ギーク:卓越した知識があること

僕にとっての本当のまとめ

チームビルディングで自己肯定感が高くなる!?

ハッカソンに参加して僕が得た一番大きな学びは、ハッカソンを通して自己肯定感が高まる可能性がかなり高いということです。たった3日間のイベントでしたが、チームメンバーはお互いに人となりをかなり見ている!というかチームメンバーの個性と向き合わざるを得ない。

上記でさんざんイジってきたねーさんですが、実はかなり気遣い・空気の読める人です。ふら〜と休憩に行きふら〜と戻ってきたかと思うと、プロダクトに対してかなり鋭いツッコミを入れてくる。メンバーは「あ、確かに。その視点忘れていた…」となる訳です。しかも、分からないことを分からないと言える力がある。普通なら遠慮して聞かないことでも、ねーさんは普通に聞く。「それさっき説明しました…」となる場面でもメンバーはもう一度丁寧に説明する。これがとても大事な時間なんですね。何回も説明し合うことで、チーム内の共通認識が強くなるんですよ。チームは初めて会う人ばかりで構成されています。誰がどんなスキルを持っていて、どんな弱点があるかも分からない。そんな状況で、何度もお互いの考えを確認し合えるタイミングができたのは、ねーさんの「聞く力」があったからだと思います。

他のメンバーにもめちゃくちゃ良い点がたくさんありました。良い点というのは、プログラミングスキルやデザインスキルといった目に見える力(認知能力)だけでなく、協調、共感、思いやりといった目に見えない力(非認知能力)も含みます。

リーダーやS君からは、日々の仕事もプライド持って楽しんでるんだろうなぁと、仕事に対する自尊感情が伝わってきました。ハッカー兼デザイナーのM君はなんでもやってくれて、動画のテロップ入れまでやってくれました。作業量でいったら僕の100倍は働いています。しかも、それらの作業をやりつつ他チームのヘルプにも行っている!T君はメンバーの認識のズレをなくそうとする姿勢が最高でしたね。口喧嘩とディスカッションの違いを明確に理解していて、共通理解のためならちゃんと主張できる。

そして、チームAのKさんも良い仕事してましたね。Kさんも僕と同じように遊び人的立場だったと思います。よくうちのチームに遊びにきて雑談していました(笑)でも大事な場面で良い動きをする。チームAのハッカーの方(ひきこもり経験者)がどうやらプログラミングで行き詰まっていたようで、もう無理だ〜!となったらしいんです。その時にKさんがうちのチームに来て「ちょっとリーダー(ハッカー)貸してもらえません?てへぺろ♪」と頼んで来たんですね。これすごい活躍ですよ。たぶんKさんのフォローがなかったらAチームの開発は止まっていた。Kさんがちょいちょいうちのチームで雑談していたことが、チーム間での協力体制の土台を作っていたんですね。

こんな感じで、メンバーが本当によくお互いを見ていました。そしてアフターパーティーでは、誰が何を指示するでもなく、お互いの褒め合いが始まる。「〇〇さんのあの気遣いでだいぶ作業しやすくなりました!」「あの時本当に助かりましたよ〜!」という感じです。

これ、めちゃくちゃ気分がいいんですよ!「あなたのおかげで頑張れました!」と言い合えるとお互いに自己肯定感がものすごく高くなるんです。チームビルディングを通して自己肯定感を高める方法はかなり有効だと感じました。

豪華なアフターパティー

コミュニティの価値観が示されたイベント

今回のイベントがただのハッカソンだったら、スキルのない僕には地獄の3日間になっていたかもしれません。「何のスキルも無いくせに良くノコノコと参加したな!できること無いならコーヒーいれてろ!」と言われていたことでしょう。なぜ参加者のみなさんは優しい人ばかりだったのでしょうか?遊んでばかりいる僕とうまく付き合ってくれたのでしょうか?

それは、このイベントが「ひきこもり支援」という価値観を前提に集まった人たちだからと考えています。今回のハッカソンに参加された方はみさなん「ひきこもり」に興味関心がある人たちです。その時点で、相手を理解しよう、多様性について考えようという価値観を持っているのです。トラブルがあって当たり前、できない人がいて当たり前というやさしい雰囲気がある。このように、「ひきこもり」というテーマでハッカソンを設計することで、参加者をスクリーニング(ふるいにかけること)している点が非常にうまいなぁと感じました。

まさか浜辺でジャンプすることになるとは…